人間が生活活動を続ける限り、原野を開墾したり、道路を建設するなど、ある程度の自然破壊はやむを得ないことでしょう。しかし、破壊された自然をいかに復元し、自然と調和させるかも、大切なことではないでしょうか。 かつて、ある国立公園の中で、のり面が緑のペンキでぬられているのを見たことがあります。これではせっかく自然を求めていった人達にとって、その価値が半減するというものです。今や、人々は工業化されていく中で、ますます自然に対する憧憬を強めつつあります。だからこそ、のり面はできるだけ美しく、自然と調和のとれたものにしなければなりません。従来、数多くの工法が開発されていますが、いずれの工法にもそれなりの難点があるようです。 その主な理由は、基盤の特殊性にあります。水や養分の供給が、極度に限られている環境だからです。近年、このような劣悪な条件下においても、十分対応しうる新しい工法が開発されました。バイオ・オーガニック工法がそれです。主たる肥料成分は発酵した有機質資材によっていますし、保水力を高める資材や、植物の発根を促す物質も含まれています。 さらに、ソウケンフォームという袋状マットのものに上記の素材を水と混和した後、注入し、ポイントごとにアンカーピンを使って斜面に固定しますので、崩落も起こりません。現在、すでに行われたいくつかの現場に工事後数年で法面がほぼ自然の状態に復元されたところも観察されています。 今後、改良の余地がまだあるにせよ、この工法は従来のものと比較して多くの点で優れているといえましょう。 国立大学法人帯広畜産大学名誉教授 |